
2年がかりだった菅野のフォーム修正
昨年15勝をマークし、完全復活した菅野智之(現オリオールズ)が良い例だろう。23年のシーズン途中から久保コーチと二人三脚でフォームの修正に取り組んだ。この年は4勝8敗に終わったが、翌年の復活劇につながった。
菅野と対戦した他球団の選手は変化を口にしていた
「リリースポイントが高くなり、角度のある直球で思った以上に差し込まれました。球速は前年と大きく変わらないですけど、キレが全然違いましたね。あとはフォークも厄介でした。落差が大きくなり、スライダー以外に縦の変化もケアしなければいけなくなったので攻略が一気に難しくなりました」
菅野がフォーム改造に取り組んだ時間の長さを考えると、田中もすぐに成果が出るとは考えづらい。そして、巨人の先発ローテーションを考えると、大きな重圧を背負い込む必要はないだろう。エースの戸郷翔征は精彩を欠いてファームで再調整しているが、山崎伊織、井上温大、赤星優志、新加入の石川達也が安定した投球を続けている。ファームにはグリフィンが控え、救援でロングリリーフが可能な横川凱も先発で活躍できる力を持っている。
「戸郷、グリフィンの状態次第ですが、田中は次回登板の広島戦で結果が出なければ、ファームで投球フォームを固める作業に打ち込むプランが考えられます。シーズン終盤に戦力になってくれれば十分ですし、今季中の通算200勝の達成も可能だと思います」(巨人を取材するスポーツ紙記者)
名球会入りの条件である通算200勝は、打者の通算2000安打よりハードルが高い。2015年からの10年間で、打者の2000安打達成者は11人いるが、200勝を達成した投手は16年の黒田博樹、昨年のダルビッシュ有の2人だけだ。
「先発、中継ぎの分業制が確立して規定投球回数に到達する投手が減っている中、200勝を達成するのは至難の業です。昨オフに楽天を退団し、一度は現役続行の危機を迎えた田中は、野球ができる喜び、1勝の重みを肌で感じたと思います。大記録は通過点に過ぎないかもしれませんが、早く達成したい思いは強いでしょう」(スポーツ紙デスク)
5月1日の広島戦で王手をかけられなくても、じっくり再調整して挑んでほしい。田中が大記録を手にする姿を、多くのファンが期待している。
(今川秀悟)