死者は訴えられないことにつけ込んで、死後も尊厳が奪われる。金尻さんは、「性的な画像や映像に映った人は、亡くなれば、肖像権やプライバシー権など、すべての権利を失ってしまう」と感じてきた。
「たとえ、若いときにヌードの撮影や公表に同意したとしても、その同意は未来永劫、有効だとは思いません。このような状態は是正されなければならない」(同)
法的に野放しでいいのか
ジェンダー問題や性犯罪に詳しい中山純子弁護士も、八代さんのケースは「リベンジポルノに当たりうる」と考える。しかし、2014年に成立した「リベンジポルノ防止法(私事性的画像記録の提供等による被害の防止に関する法律)」では処罰できるか疑義があると見る。
「同法は『親告罪』です。つまり、被害者本人の告訴が原則です。亡くなった方がリベンジポルノ行為をされた場合について、遺族が告訴できるのか、この法律は明確ではない」(中山弁護士)
ただ、仮にリベンジポルノ防止法が適用できたとしても、「検察官のハードルはかなり高い」と推測する。
「いつ、どこで、どのような状態で撮影されたのか。通常の捜査であれば、ご本人から話を聞くことになりますが、そこが欠けた状態で立件できるのか」(同)
捜査で起こりうる壁を指摘したうえで、中山弁護士は、こう続けた。
「八代さんへの行為が、何の法にも抵触しない、ということになったら、死んだら自分の性的な画像はどうされてもいい、という話になってしまう。これが野放しになっていいとはとても思えません。今回の事態がリベンジポルノ防止法改正への議論に結びつくことを期待しています」