大根仁さん。2024年 新語・流行語大賞 トップ10に「地面師たち」の名ゼリフ「もうええでしょう」が選ばれた(写真:西村尚己/アフロ)
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 テレビ離れが進む一方、Netflixといった動画配信メディアの存在感は増し、テレビマンも、活躍の場を配信メディアに移しつつある。ドラマ「エルピス―希望、あるいは災い―」や「モテキ」などを手がけた映像ディレクターの大根仁さんも、その一人。Netflixで制作した「地面師たち」が大ヒットしたことを機に、昨年9月に同社と5年間の独占契約を結んだ。そんな大根さんに、“古巣”であるテレビ業界の未来を聞いた。

〈【前編】大根仁監督が語る「地面師たち」がNetflixで実現したワケ “移籍”はテレビから仕事が来なかったから? から続く〉

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――「地面師たち」の制作にあたっては、Netflixから十分な予算や撮影期間が与えられたそうですね。ギャラも高いと聞きます。低予算とタイトなスケジュールが常態化しているテレビドラマから移り、カルチャーショックを感じましたか?

 僕も40代前半までは、ものづくりにおいて「低予算だけど、気合とアイデアで乗り切る!」こそが正義だと思っていましたよ(笑)。でもいい年になってようやく、経済活動である以上は一緒にやってきたスタッフたちの収入を安定させてあげたいという思いもでてきて。Netflixの人道的な制作環境は、職場という意味でも非常に健全で理想的でした。

 キャストやスタッフへのケアもグローバルスタンダードに沿っていました。1日の撮影時間は上限が決まっているし、セクハラやパワハラがあった場合にNetflixのコンプライアンス部門に相談できるホットラインも整備されていました。

――近年、大根さんをはじめテレビ出身のクリエイターたちが続々と、仕事のフィールドを配信メディアに移しています。テレビ業界の未来についてどう見ていますか?

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