
Netflixは必ずしも“黒船”ではない
僕は、テレビがオワコンだとは思っていませんよ。配信ドラマのような高品質なコンテンツを毎日集中して見ていたら疲れますよね? 肩の力を抜いて楽しめるテレビドラマはこれからも一定のニーズがあると思います。たとえるなら、配信ドラマはお金を払って食べたいものを味わう“高級レストラン”、テレビドラマはカジュアルな“ファミレス”。どちらにも存在意義はあるわけです。
それに、テレビ局が作るもののクオリティーが必ずしも落ちているわけでもない。最近めちゃくちゃ面白かったドラマは、日本テレビの「ホットスポット」です。バカリズムの脚本はもちろんよかったけれど、とにかく映像の完成度が高くて、水野格監督の演出の手腕にも驚きました。こういう手間と時間をきちんとかけたドラマを作れるということは、テレビ局にもまだまだコンテンツメーカーとしての可能性があると思います。
――大根さん自身は当面、Netflixを主戦場にするのでしょうか?
もちろん独占契約期間である5年間はそうなりますが、その後は分かりません。映像業界は良くも悪くも村社会みたいなところがあって、NHK村、民放局村、映画村、自主映画村など様々な村社会がありますが、僕はどこにも属していません。村ごとに、僕に声をかけてくれるような変わった人がいて、今はたまたまNetflixにお邪魔しているだけです。
僕は20年以上前から、誰も手をつけてこなかった深夜ドラマ枠を(「モテキ」などで)開拓してきた自負があるのですが、日本では10年の歴史しかないNetflixの仕事には、久々に“未開の地”を耕しているような感覚をおぼえます。めちゃくちゃ広大で栄養がある土壌です。
テレビ局にとって、Netflixを脅威に感じる部分もあるのかもしれませんが、敵対するのではなく、いいところを利用しあって、クロスオーバーしていけばいいと思います。実際、テレビ局がNetflixに企画を持ち込むパターンは増えていますしね。局が持っているノウハウや人材を生かす場が配信という新たな土地にも広がったと捉えれば、Netflixは必ずしも“黒船”ではありません。
(AERA編集部・大谷百合絵)