岡本真夜さん(事務所提供)

「TOMORROW」歌詞に秘められた“祖父への思い”

 その5曲の中には、後年にNHK「みんなのうた」にも選ばれた「ハピハピ バースディ」もあった。その中でドラマ「セカンド・チャンス」(TBS系)の主題歌として白羽の矢が立ったのが「TOMORROW」だった。

「実は5曲の中で『TOMORROW』は私やスタッフの間では一番ではなかったんです。でもドラマのプロデューサーさんが気に入ってくださって。最初はミディアムバラードで作った曲だったので、私の中ではしっとりとした感じで完成していたんですが、ドラマ側から『アップテンポにしてほしい』と言われて、今の形になりました」

<涙の数だけ強くなれるよ アスファルトに咲く花のように>――「TOMORROW」の印象的な歌い出しの歌詞は、岡本さんが祖父からもらった手紙から着想を得ている。

「今はもう天国にいる祖父は、上京することにも反対していたので家を出てからずっと連絡を取っていなかったんですが、デビュー前のある日に手紙をくれたんです。分厚い手紙に『やるからには頑張れ』と応援する内容をぎっしり書いてくれていて……その手紙の最後に、『涙が多いのが人生だよ』と書いてくれていたんです。すごく苦労して私を育ててくれていたのを私も見ていたから、やっぱり祖父のその言葉が響いて、あのサビの部分ができたんだと思います」

 しかし、アップテンポの曲に変化した「TOMORROW」が大ヒットしたことで、岡本さんは長く葛藤に苦しむことにもなった。

「今でもそうなんですけど、アップテンポの曲がなかなか浮かばないんですよ。浮かぶのは8~9割がバラードか、マイナー系の曲ばかり。この30年アップテンポの曲を求められ続けてきたので、けっこう苦しい部分がありました。それから、「TOMORROW」がアップテンポになったことを受け入れるのにも時間がかかりました。もちろんタイアップやデビューはうれしかったんですけど、私としてはバラードとして完成していたので、全然違う色になってしまったのが切ないというか……。いろんな葛藤をのみ込んで着地するまでに、たぶん20年ぐらいかかっています」

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