もう一つ考えられるのは選手という立場だけではなく、コーチという役割も担うという方法だ。これまでもベテランとなった捕手がコーチを兼任しながら長くプレーし続けたという例は確かに存在しており、ベンチマークする対象としては昨年までオリックスで監督を務めた中嶋聡(現オリックス・スペシャルアドバイザー)が挙げられる。中嶋も若い頃は強肩を武器に正捕手として活躍したが、徐々に出場試合数が減少。それでもオリックスから西武、横浜、日本ハムと渡り歩き、2007年から引退する15年まではバッテリーコーチを兼任しながら現役を続けている。ちなみに実働29年は工藤公康(元西武など)と並ぶNPB最長タイ記録である。

 巨人としてもドラフト1位で入団し、生え抜きで活躍してきた捕手というのは貴重な存在であり、将来は指導者としても活躍してくれることを期待しているはずだ。中嶋ほど長く現役を続けることは簡単ではないが、キャッチャーというのは特殊なポジションであることを考えると、プレー以外の面で生かそうという動きが出てきてもおかしくはないだろう。今後、小林にとっても巨人にとっても、その経験を最大限生かすような起用法を模索していってくれることを期待したい。

(文・西尾典文)

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