南カリフォルニア大学の精神医学・行動科学准教授であるスチュアート氏は、「摂食障害は、女子だけが患うのではない」と言います。スチュアート氏によると、摂食障害の3人に1人は男性か男児が罹患しており、「摂食障害は女子のみに起こる」というステレオタイプは真実ではないことを指摘しています。また、トロント大学精神医学部の教授であるブレイク氏も、「筋肉質のスーパーヒーローや、小柄なコンピューターオタクなど、社会が許容範囲とみなすいくつかの男性的な体型に合わせるプレッシャーを感じる結果、男性も摂食障害につながっているのだ」といいます。カロリーを制限するだけでなく、過度なトレーニングやタンパク質の過剰摂取、脂肪や炭水化物といった栄養素の大幅な制限をしてしまうケースもあることを指摘しているのです。

 近年、過度なダイエットなどを呼びかけるSNSの投稿が未成年を含む若い世代への影響が懸念されているなか、「LINEヤフー[※3] 」では匿名でチャットのやり取りができる「オープンチャット」で摂食障害などを助長する投稿の取り締まり対策の強化に乗り出したといいます。利用者に対して直接「そのダイエット、正しいですか?」などとする注意喚起の表示を始めるほか、「過食、拒食、摂食障害を助長する投稿」に該当した場合は投稿の削除や、利用停止の措置などをとる可能性があるということです。

 どうしても太りやく、体型を気にしがちな私は、何気なくSNSを眺めていると綺麗な体型の写真が写っているものや、「〇〇でやせました」といった投稿に目が行きがちでした。しかし、手に届く範囲に携帯電話を置かないこと(ふと気がつくと、携帯をいじってしまうから)、そして通知をOFFにすること(通知の音が鳴ると、つい携帯を手に取って見てしまうから)で、自分の体型を意識させるような投稿から目を逸らすだけでなく、SNSの世界にどっぷり浸かって時間を無駄にするということもなくなりました。その上、SNSの世界から離れることで、全然知らない人に対して羨ましく思ったり、憧れたりすることが減り、気持ちがとても楽になったような気がします。

 過度なダイエットが最終的に摂食障害にまで至った私の例は、あくまで一例です。しかしながら、ダイエットを助長させるような広告、宣伝や番組、SNSでの投稿がたくさん溢れる今の社会は、摂食障害を引き起こすきっかけにつながる要素がたくさんあると感じざるを得ません。この問題に真剣に取り組み、過度なダイエットや摂食障害に陥ってしまう人を一人でも多く減らすことのできる世の中になることを願っています。

【参照URL】

 [※1]https://dot.asahi.com/articles/-/249250?page=1

 [※2]https://www.frontiersin.org/journals/psychology/articles/10.3389/fpsyg.2021.641919/full

 [※3]https://www3.nhk.or.jp/news/html/20250412/k10014777171000.html

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