「早く始めて、長く運用するほど複利効果で資産が増えやすくなります。最もメジャーな“オルカン”と呼ばれる全世界株式指数に1998年7月から毎月1万円ずつ積み立てた場合、25年3月末まで約27年間の投資額321万円は、トランプショックで大きく下落したものの、直近の時価総額で約1600万円へと5倍に増えています。今後も運用を続けながら、老後に必要な分だけを取り崩すようにすると資産寿命を延ばせます。例えば1500万円を65歳から毎月6万円ずつ取り崩していったら20年10カ月で使い切ってしまいますが、オルカンのような投信で、期待リターンは控えめに想定し年率5%、リスク量18%で運用しながら同じように取り崩していけば、市場の状況にもよりますが資産を長持ちさせることができます。上位50%の確率では、95歳時点で200万円ほど資産を残せます」(同)

固定支出を減らす 

 その運用の鉄則は、長期・分散・低コストだという。

「お子さんのいる家庭の多くは子どもの教育資金を確保するために学資保険に入る傾向にありますが、返戻率が非常に低いのでお金を増やす目的なら不向きです。個人年金保険も同じです。保障と運用の両方にコストがかかる分、資産が増えません。お金を増やす目的なら、新NISAやiDeCoを優先させましょう。途中で引き出さないですむように運用の計画を立てることが必要ですが、新NISAなら資金を一部引き出すことも可能です。また、突発的な支出の備えとして、普通預金に1年分の生活費をプールしておけば、仮に大きな医療費がかかっても高額療養費制度でカバーもできるため、医療保険も不要と考えます。こうした固定支出を減らして、資産運用に回すべきでしょう」(同)

 将来受け取れるであろう年金は「ねんきんネット」で誰でも確認できる。自分の年金受給額をチェックしたうえで、老後に必要な資産と体力づくりに励むべし。

(ジャーナリスト・田茂井治)

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