魚雷バットの影響力の大きさを受け、4月11日に開催されたNPBのプロ規則委員会において日本の公式戦でも使用可能となった。

「NPBの対応はMLB人気に押されていることへの悲壮感もあるのだろう。最近は球が飛ばなくなっており、投高打低のロースコアゲームが増えつつあった。試合時間短縮は進んでいるが、『点が入らなくて面白くない』という声が聞かれるのも事実」(スポーツマーケティング会社関係者)

 手に汗握る投手戦や1球ごとの駆け引きは野球ならではの醍醐味だ。しかし女性や子供からすると「打ち合い」の点取りゲームの方がわかりやすい。またチームを超えて選手応援歌を歌いたいファンも増えている。

「『試合時間が長くなっても攻撃が長ければ良い』という人は多い。打撃力が上がるギアを導入することで観戦者へ向けたエンタメ性を高められる。魚雷バットはNPB人気を盛り上げるためのアイテムになるかもしれない」(スポーツマーケティング会社関係者)

 実は国内での魚雷バットは今になって登場したギアではない。1980年代には高校野球などのアマチュア世代をターゲットに、同形状の金属バットが販売されていたことがある。

「振り抜きやすさから大人気となり、甲子園大会の本塁打増にも貢献した。しかし打球速度が飛躍的に上がったことで危険性が問題視され、数年後には販売終了している。40年近い月日を経て、同形状のバットが海の向こうからやってくるのは面白い」(在京テレビ局スポーツ担当)

 世間には多くの娯楽コンテンツが溢れ、パイの取り合い状態が続いている。野球が生き残っていくためには、見応えあるエンタメにする必要がある。攻撃時間を長くするためにも魚雷バットが必要ということだ。

「今後はルール内におけるギアの開発競争も激化するのではないか。イチロー氏や松井秀喜氏がデータ偏重の野球界に苦言を呈していたが、今後はギアに対しても似た意見が出てくるだろう。時代は大きく変化しており、『古き良き野球』というのはすでになくなってしまったのかもしれない」(在米スポーツライター)

 今季終盤にはNPBでもかなりの選手が魚雷バットを使用しているはず。ツールの変化、進化はどの業界でも当たり前で、対応しなければ生き残ってはいけない。それでも「野球の良さ」だけは変わらないで欲しいとも感じてしまうのだが……。何よりも今後、投手にとって苦難の時代が待っているのは間違いないだろう。

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