山梨学院の林謙吾
山梨学院の林謙吾
この記事の写真をすべて見る

 今年の選抜高校野球には驚きが詰まっていた。山梨学院の初優勝に、公立校の大健闘、そして、こんな選手がいたのかときらり光る選手たちが次々出現した。選抜で活躍した投手を振り返りながら、今夏の高校野球選手権大会を占いたい。

【写真】続々と現れた注目の有望株たちはこちら

*  *  *

 まずは優勝校から選手を挙げないわけにはいかないだろう。エースの林謙吾は今大会全6試合に先発。選抜史上最多となる6勝を挙げた。投球数は計696球と、まさに鉄腕だ。本誌増刊の「甲子園」でおなじみのスポーツライター守田直樹さんは「すばらしいスタミナ」と驚きを隠さない。

「2021年の選抜大会から投手の球数制限が設けられて、1週間で500球以上の投球は禁止されました。06年夏の斎藤佑樹(早稲田実)や18年夏の吉田輝星(金足農)などの熱投は記憶に新しいですが、林は1週間の制限をクリアしていたとはいえ、制限が設けられて以降に700球近く投げる投手が出てくるとは思いませんでした」

 鉄腕ぶりを発揮できるのは、51回3分の2を投げて6四死球と、優れたコントロールを持っているからでもある。

「特筆すべき球速や変化球はないんですが、内外角に糸を引くような球を投げ込める。緩急をうまく使えば抑え込めるという、球児のお手本になる投球でした」(守田さん)

「流しのブルペンキャッチャー」として全国各地のアマチュア選手の取材を続けるスポーツライターの安倍昌彦さんは「圧倒的な力は感じなかった」としつつ、ギアの入れ方は見事だったと称賛する。

「彼の一番の魅力はファイティングスピリット。ここ一番で吠えて投げ込む姿はエースとしての自負を感じさせました」

 山梨学院では遊撃手の進藤天の名前も挙がった。

「アクロバティックな動きをするわけではないですが、その守備動作は非常に堅実。守備範囲に打球が飛べば確実にアウトにしてくれる安心感がありました」(安倍さん)

 決勝こそ無安打だったが、大会を通して11安打、打率は5割超えと打撃も光った。

次のページ