
アメリカでは1963 年に麻しんワクチン接種プログラムが開始されました。現在、世界的に広く流通しているMMRワクチン(麻しん・風しん・ムンプス混合ワクチン)の、1回の接種による麻しんの予防効果は93%であり、2 回の接種による予防効果は、97% です。予防効果の高いワクチン接種の普及のおかげで、接種プログラム開始前と比べて麻しんの症例は 99% 以上減少したといいます。
ワクチン接種率を高めることが、感染力の高い麻しんの感染拡大を最小限に抑える鍵となるため、アメリカではMMRワクチン接種率の目標が95%に設定されています。しかし、幼稚園児のMMR(麻疹・風疹・ムンプス混合)ワクチンの接種完了率が2019~2020学年度は95.2%だったのが、2023~2024学年度には92.7%[※8] に減少し、4年連続で目標値を下回っています。つまり、ワクチン接種が不十分な児童におけるクラスターが蓄積する環境が整っており、麻しん流行のアウトブレイクにつながる可能性があるというわけなのです。
児童におけるワクチン接種率の低下は、近年の誤った情報や偽情報の広まりによる「ワクチン忌避」が影響していることは否めません。さらに、新型コロナウイルス感染症のパンデミック[※9] の影響による、麻疹含有ワクチンの接種の延長や未接種などを受け、アメリカでは麻しんのワクチン接種を受けていない、またはワクチン接種が不十分な地域で流行が発生する可能性が常に潜んでいる状態となっているのです。
日本の麻しんワクチン接種
日本でも、1978年10月から麻しんワクチンの1回の定期接種が始まりました。現在、より確実に免疫をつけるため、第 1 期として生後 12〜24 カ月未満の乳児に、第 2 期として 5 歳以上 7歳未満で小学校就学前 1 年間の小児に、それぞれ 1 回ずつ、MR(麻疹・風疹混合) ワクチンの接種が定期接種として実施されています。
日本小児科学会[※10] によると、麻しんの集団免疫を維持し、日本の「麻しん排除状態」を維持するためには、少なくとも第 1 期のワクチン接種率を全国的に 95%以上に保つ必要があるといいます。