山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
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 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「強い感染力の麻しんの流行で考えた、『ワクチン忌避』に関わる要因」について、鉄医会ナビタスクリニック内科医・NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 空気感染で広がり、感染力が極めて高いことで知られている麻しんウイルス。どれほどの感染力なのかというと、米国疾病予防管理センター(CDC:Center for Disease Control)によると、麻しんの予防策を講じていない人の約10人中9人[※1] が、麻疹ウイルスに暴露された後に感染するほどだといいます。

 そんな感染力の強い麻しんが、アメリカで流行の一途を辿っています。世界保健機関(WHO)は3月27日の最新情報で、昨今のアメリカにおける麻しんの感染拡大をうけ、「公衆衛生に重大な影響を及ぼす可能性のある異常な出来事だ」と述べています。

 アメリカでは、今年3月27日時点で483件[※2] の複数の州における麻しん感染が報告されました。この報告数は、すでに昨年の感染報告数(285件[※3] )を大幅に上回っている状況です。WHO[※4] は、アメリカにおける昨今の流行の原因は不明とし、麻しんのワクチンの効果が低下したり、重症度が増すような麻しんウイルスの変化が起こったという証拠はないといいます。こうした現状を受け、アメリカ国内では、この感染力の高い麻しんの流行について、国際的に感染が拡大する[※5] 可能性も含めて連日報道されているのです。

日本の「麻しん」は?

 日本はというと、アメリカほどではないものの、渡航歴のない方の麻しん感染の報告[※6] が相次いでいますね。国立感染症研究所の報告によると、今年の感染者数(2025年3月19日時点)は32人[※7] と、じわじわと増えてきていることがわかります。

 実は、アメリカでは2000年に、日本では2015年に、WHOから麻しん「排除状態」と認定され、麻しんは根絶されたことが宣言されています。これは両国ともに、麻しんワクチン接種の導入と普及のおかげなのです。

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