プラットフォーマーに対する競争政策の見直しを全世界的に促すきっかけをつくったネオ・ブランダイス学派のふたつの論文。「アマゾンの反競争政策のパラドクス」(リナ・カーン)と「合衆国憲法修正第1条は時代遅れになったのか?」(ティム・ウー)。
プラットフォーマーに対する競争政策の見直しを全世界的に促すきっかけをつくったネオ・ブランダイス学派のふたつの論文。「アマゾンの反競争政策のパラドクス」(リナ・カーン)と「合衆国憲法修正第1条は時代遅れになったのか?」(ティム・ウー)。

 ここで、ヤフーはプラットフォーマーの地位から滑り落ちる危機を迎えるのである。PCの時代は、ブラウザーを立ち上げた最初の画面に、ヤフーを登録してもらい、ショッピングや交通情報、ニュース、旅行など様々なサービスをこのサイト内で完結するように提供すれば、それだけ、ユーザーの滞在時間も長く、それが広告料金に結びついていた。

 ところが、スマートフォンの場合、ヤフーはアプリのひとつになってしまった。スマートフォンのプラットフォーマーはOSを提供しているアップルであり、グーグルだ。アプリストアに提供する側は、3割なりのしょば代をアップルに払ってアプリという出店をだす。

 ヤフーとその親会社であるソフトバンクは、どうすればそうした状況のなかで、スマホでも、プラットフォーマーとしての地位を獲得できるかを当時考えた。

 グーグルやアップルに対抗してOSをつくり、それを普及させるというのは現実的ではない。そこでソフトバンクの孫正義が着目していたのが、決済アプリだった。

 孫は、1999年の夏、ジャック・マーに会い、米国のドットコムバブル崩壊で、潰れかかっていたアリババに3000万ドルを出資、ソフトバンクはアリババの筆頭株主になる。アリババは、2010年代に、独自の決済アプリ「アリペイ」をつくりあげていた。中国の小売はみな現金からQRコード決済を利用したアリペイでの決済に置き換わっていくなかで、このアプリは、余額宝とよばれる投資信託やホテル・交通機関の予約、EC、さらには税金の納付まで様々なサービスの入口となっていく。個人個人の信用格付けを点数化する芝麻信用とセットで使われ、中国の人々はまずこのスーパーアプリ「アリペイ」を開いて生活を始めるようになった。

 つまりスマートフォンのOSをとらずとも、アリババは、決済アプリでスマートフォンでのプラットフォーマーの地位を確立したのである。

 それを日本に移植しようとしたのが、ヤフーとソフトバンクが2018年10月に始めた「ペイペイ」ということになる。現在の登録者数が5000万人、QRコード決済でのシェアが6割というから、プラットフォームとしての地位を築きつつある、ということになる。

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