チームを一つにまとめるキャプテンの遠藤航(右)と、最終予選を通じて献身的なプレーが光った堂安律(写真:森田直樹/アフロスポーツ)
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 サッカー日本代表はアジア最終予選を突破し、北中米ワールドカップ出場を決めた。予選3試合を残し、過去最速の決定だった。しかも、ホスト国のアメリカ、カナダ、メキシコを除けば、日本が最初に出場権を手にした国になった。その裏には、選手たちの意識の「変化」があったという。AERA 2025年4月7日号より。

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 前回予選と比較した時に大きく変わったのが選手の意識だ。キャプテン、遠藤航(32)がその変化を説明している。

「最終予選では勝っていても、いい意味でみんなの笑顔が少ない。それは高みを目指していて、W杯優勝という目標があって、勝っても自分たちの中で『もっとこうできるんじゃないか』みたいなところを話し合いながら次に向かっていくチームになっているからだと思う。そういう関係性が今の代表にはある」

 W杯までの4年間を一つのサイクルと考えると、森保一監督(56)は日本で初めて2度目のサイクルをスタートさせている。そしてチームは森保体制の2期目から「W杯優勝」を目標に掲げるようになった。

 まだラウンド16より先に進んだことのない日本が優勝を目指すのは簡単ではない。だから選手たちは、代表活動はもちろん所属クラブでの活動においても「W杯優勝」から逆算して行動するようになったという。

 苦しい状況を迎えても諦めずに最善策を求め続け、試合に勝利を収めても常に課題にフォーカスする。その中で選手それぞれが自分のエゴを優先するよりもチームでの役割を全うすることが当たり前になった。

 3月20日に行われた出場決定試合のバーレーン戦はある意味で日本の成長を表す象徴的な試合だった。前半は「最終予選で最低の内容」と関係者が振り返るほど相手に持ち味を封じられた。パスが回らず、武器である三笘薫(27)、堂安律(26)の両ウイングバックも押し下げられて前に出られない。試合の1週間前に来日して準備を重ねた相手の守備に苦しみ、スムーズなパス交換から前進するいつもの形ができなかった。

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