
だが、苦しい前半も耐えるべき時間ととらえてしのぎ切り、後半の攻勢につなげた。久保建英(23)のハイパフォーマンスが光ったのはもちろんだが、途中出場の鎌田大地(28)や伊東純也(32)がチームに必要な攻撃的な役割をきっちりやり切ったことも大きかった。
「前半はなかなかリズムが出ず、このまま試合が続くことも考えられました。自分たちの理想通りにいかない中で切れてしまわないように選手たちが非常に我慢強く、冷静さを持って戦ってくれた」
さらなる進化求めて
指揮官は選手の成長を称えた。そして先制点を挙げた鎌田は自身の考え方の変化を明かした。
「今は5人の交代制もあって、プレー時間も長くなっている。もちろんスタメンで出たいのは分かりますけど、W杯の時もどちらかと言えばスタメンの選手よりも途中から出ている選手の方が活躍したり、注目されたりしたと思う。今はチームのみんながお互いの実力をある程度認め合っているし、自分が出ていなくても、昔みたいに『何であいつが出るんだ』という思いよりも、自分が出た時にしっかりやるという気持ちになっているんじゃないですか。僕も今は出た時に自分の仕事をやるという方向にフォーカスしています」
過去最速の出場も世界最速も一日にしてならず。当然、W杯優勝も同じだ。求められるのは、すべての面でのさらなる進化。
バーレーン戦に続く3月25日のサウジアラビア戦では早速、新たな課題を突きつけられた。先発が6人入れ替わったこともあるが、カタールW杯のコスタリカ戦のように、実力国に極端に守られたことで日本は沈黙した。
誰が出ても連係の質が落ちない選手層の拡充、そして強固な守備を崩し切る力。最速突破を成し遂げたチームには幸いにも本大会まで1年3カ月とこれまで以上の準備期間がある。今回の最終予選と同様、ここからの過ごし方にも、2期目の指揮官ならではの手腕が期待される。(ライター・佐藤景)
※AERA 2025年4月7日号より抜粋