「私の場合、もう産めないかもしれないけど、可能性はゼロじゃないという40代前半が、心理的に一番きつかった。そのつらさの中で、卵子凍結が“心のお守り”になったのは事実。たった7個かもしれないけど、“私には、今より若い卵子がある”ということが、心の支えになってくれたと思う」
そして満45歳を迎えた誕生日の翌日、凍結卵子の廃棄同意書にサインした。4回の保管延長の更新をして、保管期限の上限まで凍結保管されていた卵子。保管費用にかかった金額は、約50万円だ。
クリニックを出て、歩きながら自然と、涙がこぼれた。「お疲れさま、頑張ったね、私」「これで良かったんだよ。やれることはやったんだよ」心の中で、自分に向かって、そう声をかけた。なぜか電車で帰る気にはなれず、1時間ほどかけて歩いて帰宅。家に帰った瞬間、大声をあげて泣いた。静かに泣くのではなく、「うわーーーん!」と声をあげて泣きたい気持ちだったという。
『-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』は、朝日新聞出版公式note「さんぽ」で3月31日13時まで、全文無料公開中。