※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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「いつかは子どもを」と考えつつも、日々の生活や仕事に追われているうちに、“出産適齢期”の上限とされる35歳を過ぎてしまう。万人に共通するベストな「産み時」なんてないけれど、タイムリミットも存在する。そんな悩みを解決すべく生まれたのが、「卵子凍結」という医療技術である。 

 週刊朝日の元記者、松岡かすみさんの著書『-196℃の願い 卵子凍結を選んだ女性たち』の中では、年齢も育ちもキャリアも違う8人の女性が登場する。第7回は、佐々木久美さん(仮名・46歳・広告制作会社)の声を再構成して紹介する。

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 都内の広告制作会社に勤める佐々木久美さん。40歳の時に卵子凍結をしたが、45歳で使わないままに廃棄した。クリニックの保管期限によって、致し方なく決断せざるを得なかった。 

 29歳から35歳までの6年間、真剣に交際していた男性がいた。佐々木さんから猛アタックして交際に発展した相手だ。半同棲の期間も長く、年齢的にも「この人と結婚するのだろう」と思っていた。ところがある日、相手から突然「別れてほしい」と告げられる。別れてからしばらくは、げっそりと痩せていた。「あのときは、廃人のような数カ月を過ごしてました」と遠い目で語る。
 

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