
熟練の刺繍職人が手掛けたこの着物は、一幅の日本画のような美しさだ。
波や雲、霞など,とらえどころのない自然を美しく意匠化できるのは日本特有の美意識の表れと言われる。
金糸や銀糸で縫い込まれた雲取りや波の意匠を背景に、雄大に羽ばたく鶴や甲羅に生えた海藻が尻尾のようになった蓑亀など寿の象徴とされる生き物、常緑の松とふっくらと愛らしい橘の実が、刺繍で見事に描かれている。
宮中の伝統を引き継いで、着物や装束を身に着けた皇族方が臨む儀式や行事には、織や染、刺繍など、さまざまな職人が携わる。職人にとっても伝統技術を継承していくための貴重な機会となっているという。
悠仁さまは今後、筑波大で学びながら成年皇族として公務にも携わり、そして9月には成年式が予定されている。ここで悠仁さまは、古式ゆかしい装束姿で成年の象徴である冠を着用するなど宮中の文化と伝統を受け継ぐ儀式に臨み、皇位継承権を有する男性皇族として成年になったことが内外に表明される。
(AERA dot.編集部・永井貴子)

