
東京と大阪を中心とした大都市圏の鉄道網。駅を中心に街をつくり、沿線開発を競ってきた。しかし、どの路線が強いのか。真の強さとは何か。関東の鉄道を知り尽くした鉄道ライターに、東のトップスリーを挙げてもらった。AERA 2025年3月24日号より。





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東京と大阪を「核」とする大都市圏には、世界でも類のない鉄道網が張り巡らされている。JR、私鉄、地下鉄が密接に発達し、駅を中心に街をつくり、沿線を開発してきた。
一覧を見てほしい。関東と関西を走る主な鉄道の、2023年度の売上高や営業利益率など「実績」一覧だ。
稼ぐ力が突出しているのは「東京メトロ」。都心を中心に9路線を展開し、総延長は195キロ。営業利益率は19.6%と、JR東日本(12.6%)より高く、他の私鉄の2倍近い水準で、まさに「最強の鉄道」だ。
沿線の文化と風土生む
だが、『関東の私鉄沿線格差』の著書がある、鉄道ライターの小林拓矢さん(45)は言う。
「鉄道には、売上高や営業利益率など数値だけでは測れない強さがあります」
鉄道各社には、沿線創業当時から長年にわたり積み重ねてきた固有の歴史というものがある。その「沿線カラー」の違いが、それぞれの沿線の文化や風土を生み出し、「強さ」のもとになっていると。そこで、関東の鉄道を知り尽くした小林さんが考える「東」の強い路線トップスリーを挙げてもらった。
トップは「小田急電鉄」だ。
小田急が開業したのは1927(昭和2)年。その後、江ノ島線や多摩線の開業など鉄道事業を核に、経営の多角化を図り事業を拡大。今では日本最大のターミナル・新宿を拠点に、東京都心と神奈川県西部を結ぶ鉄道ネットワークを展開する。とはいえ、小田急の営業利益率は12.4%と東京メトロ(19.6%)と比べかなり劣る。なぜ小田急なのか? 小林さんは言う。
「小田急が何と言っても強いのが、みんなが憧れる有料特急を持っていることです」
小田急の有料特急と言えば「ロマンスカー」。東京都心部から、神奈川県の小田原・箱根湯本方面や片瀬江ノ島方面を結ぶ。
ロマンスカーは、初代「SE(3000形)」が1957年に登場。高性能特急専用車両として開発され、当時の狭軌鉄道世界最高速度145キロを達成した。現在は、デザインと機能性を両立させた「GSE(70000形)」など4車種が走る。
