第2位 東急:営業キロ110.7キロ、駅数99駅。他の大手私鉄のように、看板となる「有料特急」を持っておらず一見地味だが、ブランド力は随一

 有料特急は関東では、西武が「ラビュー」、東武が「スペーシア」を走らせているが、両社は「沿線力が弱い」(小林さん)。小田急は、戦前から培ってきた鉄道を中心とする複合ビジネス企業としてのノウハウを生かし、ロマンスカーによって沿線をさらに発展させてきた、という。

「何よりロマンスカーには展望席がある車両もあり、非常に格好よくて魅力的です」

 さらに、小田急が2022年3月、他社に先駆け12歳未満の子ども運賃をICカード利用で全区間50円にした点も評価する。

「他の鉄道会社でも、沿線に子育て世帯を呼び込む取り組みとして、子どもの運賃優遇策を実施しています。しかし、小田急の強さは、不確実な状況の中でも他社に先駆けて実施した決断力にあります」

文化の東急走りの京急

 次に、「強い路線」として小林さんが挙げるのが「東急電鉄」だ。東急は鉄道院出身の五島慶太が、1922(大正11)年に目黒蒲田電鉄を設立し、グループの礎を築いた。五島は沿線に娯楽施設やデパートをつくり、住宅地を開発し、沿線の付加価値を高めていった。今では渋谷と横浜をつなぐ東横線など「ドル箱路線」を抱え、2023年度の売上高は1兆378億円と、売上高では関東の私鉄ではダントツ。ただ、路線が長いわけでも沿線に観光地があるわけでもないので、有料特急のような「華」のある列車があるわけではない。だが、小林さんは「東急は文化的集積が非常に高い」と評する。

「東急は鉄道を中心に地域をまるごと開発し、そこに豊かな層が暮らせるようにすることで沿線価値を高めてきました。鉄道サービスと住宅サービス、その他の商業サービスなど、経済的にも文化的にも豊かな層が求めるものを提示し、多くの人を引き寄せてきました」(小林さん)

 3位は、「京浜急行電鉄」。

 前身は1899(明治32)年に、川崎大師(川崎市川崎区)への参拝客向けに開業した「大師電気鉄道」だ。名前の通り、開業当初から電化した関東初の鉄路だった。現在の京急の主要路線は京急本線で、品川から川崎、横浜を抜け、三浦半島の海沿いを走る。23年度の営業利益率は10%と、中堅どころ。しかも、特急車両や豪華な観光列車があるわけでもない。それなのに、京急には熱狂的ファンが多いことで知られる。小林さんは、「京急は鉄道そのものの力が強い」と言う。

「車両、走り、ダイヤです。まず、車両は印象的なきれいな『赤』。走りは走行性能が高く、加減速が非常にスムーズです。そして、京急のダイヤは、快特とか特急など速達列車と、普通列車との乗り継ぎが非常に緊密にできています」

(編集部・野村昌二)

第3位 京急:営業キロ87キロ、駅数73駅。最も「熱狂的なファン」が多い鉄道で知られる。沿線は、美しい自然や豊かな街並みなど多彩な魅力にあふれる(写真:京急電鉄提供)

AERA 2025年3月24日号より抜粋

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