投球練習をする大谷翔平
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 ドジャース大谷翔平(30)の二刀流復活が大幅に遅れることになった。当初は5月にメジャーでの復帰登板を目指していたが、体への負荷を考慮して2月25日を最後にブルペンでの投球練習を行っていない。デーブ・ロバーツ監督は大谷の投手としての調整ペースを落とすことを明らかにしている。

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「長いシーズンを見据えた時、無理をさせる必要はない。投手としての調整が大きな負担となり、打者・大谷のコンディションに影響することは避けなければいけません。昨年11月に左肩の手術を受けていますし、投打でペースを上げることは故障のリスクが伴います。大谷は二刀流としてプレーしたい気持ちが強いでしょうけど、勝つことが義務づけられているドジャースで替えの利かない存在です。投手復帰は夏場以降になるんじゃないですかね」(米国で取材するライター)

 ドジャースが大谷の投手復帰に慎重になるのは、チーム事情も背景にある。ドジャースの先発陣を見ると、山本由伸、タイラー・グラスノー、ブレイク・スネル、佐々木朗希、ダスティン・メイ、トニー・ゴンソリンといった力のある投手がそろう。大谷が急いで開幕に間に合わせる必要はない。

 一方で、打者としての大谷には、得点源として大きな期待が掛かる。ドジャース移籍1年目の昨年は、打率.310、54本塁打、130打点、59盗塁で、本塁打・打点の2冠を獲得。メジャー史上初の「50本塁打、50盗塁」も達成した。チームをワールドチャンピオンに導き、3度目のMVPを受賞したが、2021年、23年の「二刀流」での受賞と異なり、昨年は初めて打者だけの成績で受賞している。

日米で異なる大谷を巡る論調

 大谷を巡る日米のメディアには論調に違いがある。日本では投打の「二刀流」復活を期待するニュースが目立つが、米国では「大谷が野手に専念するタイミングはいつになるか」という議論が識者の間で繰り広げられている。

 メジャー中地区のスカウトはこう指摘する。

「大谷は18年のシーズンオフにトミー・ジョン手術を受け、23年にも右肘にメスを入れている。もう一度肘の靭帯を損傷することになったら、投手としての復帰は厳しいでしょう。30歳という年齢も考えなければいけない。若いころに比べて疲れが抜けづらくなり、体の回復も遅くなる。投手として1試合を投げる疲労は野手とは比べ物にならない。そう考えると、投打の二刀流で驚異的なパフォーマンスを発揮できるのは、あと3年が目安だと思います。選手寿命を考えるとどこかのタイミングで投手に区切りをつけ、打者に専念するのが現実的でしょう」

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ドジャースはもともと「二刀流」に難色を示していた