ドジャースの先発陣をこの3人が担うときは来るのか。左から大谷、山本由伸、佐々木朗希

「二刀流」へのこだわりで球団を選んできた

 大谷は「二刀流」へのこだわりが強い。日本ハムから17年オフにポスティングシステムでメジャー挑戦を決断した際、まず書類審査を経て移籍先を米国の西海岸に絞ったのも、体への負担が掛からない温暖な気候であることが大きな要素だった。その後、ドジャース、ジャイアンツ、パドレスなどが移籍の有力先と目されていたが、大谷が選んだのはエンゼルスだった。

「優勝を狙える環境ならドジャースが最有力でしたが、当時のドジャースは二刀流での挑戦に難色を示していました。メジャーの歴史で誰も成功した選手がいなかったので、そのような判断になるのは致し方ない。一方でエンゼルスは、二刀流でプレーすることに全面的なバックアップを約束しました。その後、大谷が投打で偉業を塗り替えたのは周知の事実です。ドジャースは二刀流での実績を認め、昨オフに争奪戦を制しましたが、常勝軍団を築く上で大事なのは大谷が離脱しないことです。投手復帰に慎重になるのは当然と言えるでしょう」(前出の米国で取材するライター)

 投手・大谷はメジャーで順風満帆だったわけではない。18年オフの手術後、19年は野手に専念。20年に2年ぶりに復帰登板したが、2試合登板のみで防御率37.80と本来の状態に程遠く、「野手に専念した方がいい」という声が米国メディア内で高まった。それでも大谷は「二刀流」を貫き、21年に9勝、22年に15勝、23年には10勝をマーク。投手としても一流の座にのぼりつめた。

 だが、かつてメジャーでプレーした日本人選手はこう話す。

「シーズンを通じてメジャーの先発ローテーションで回るのは相当しんどい。投手だけでも体力を消耗するのに、指名打者で試合に出続けるのは考えられません。年齢とともに技術的な引き出しは増えていきますが、体力面ではこれから徐々に下り坂に入る。投手としてやり残したことがあると思うので、あと2、3年は目一杯やってタイトルを獲得してから、野手に専念してほしい。個人的には外野でプレーする大谷が見たい。彼は足が速いし、肩も強い。メジャーを代表する外野手になれます」

 これまで球界の常識を破る「二刀流」での活躍を見せてきた大谷も、いずれ1本の刀を置くときがくるかもしれない。打者・大谷とともに、投手・大谷の活躍が少しでも長く続くことを願いつつ、グラウンドでの姿を目に焼き付けておきたい。

(今川秀悟)

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