つぶれては元も子もない

 だが、札幌大学や政策研究大学院大学など、複数の異なる研究機関による経済分析によると、「混合診療を容認することによって、受療機会の平等性は改善する」という。保険外診療を併用した場合、現在は全額自費になるが、混合診療が認められれば、保険適用のない部分だけの自費負担でよくなるからだ。

 たとえば、歯科治療では保険診療と自由診療を組み合わせた治療が普通に行われている。虫歯で、歯を削る治療を保険診療で受けた後、医師から「かぶせる材料をどうしますか?」と聞かれる。ここで患者が銀歯ではなくセラミックや金歯を選ぶと自由診療になる。

「混合診療が解禁されれば、多くの医療機関が患者の細かなニーズに応えたさまざまなサービスを打ち出して、収入アップを図ることでしょう」(上理事長)

 病院に経営を改善できる手段を与えるとともに、国や自治体がある程度建て替え費用を負担するのが病院を存続させるための現実的な方法だと、上理事長は考える。

「病院がなくなると困る人が大勢います。つぶれてしまっては、元も子もありません」

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)

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