
――大きい会場でライブをやりたい、という気持ちもない?
絶対にイヤですね(笑)。ライブは2000人くらいが限界だと思ってるんですよ。演奏を無理なく楽しんでもらえて、人間の愛が及ぶ範囲のギリギリのサイズがそのあたりかなと。建物もそう。たとえばロンドンのビッグベンの高さも100メートル弱なんですが、それが人間の目でディテールが見える最大の大きさだと思うんです。それ以上になると、愛よりもエゴや経済が勝ってる気がして。良い、悪いではなくて、俺にとってリアルじゃないですよね。
――タイアップ曲を作って、観客動員数を伸ばすという日本の音楽業界のモデルとは合わないのかも。
タイアップも基本的にやらないです。以前やったときに、自分には向いてないなと思ったので。広告系の仕事も受けないですね。お金はいいかもしれないけど、そういう資本主義には加担したくないので。ヒップホップで“マネー、パワー、リスペクト”という言葉があるんですけど、自分の場合、マネーは最後。いちばん欲しいのはリスペクトですね。
――「新時代」(2020年4月30日)というタイトルのエッセイでは、コロナによるパンデミックを踏まえ、「さて、新しい時代を生きる同世代の若者たちに伝えます。」「2020年、我々が価値観をアップデートさせていきましょう。」と綴っています。この文章はnoteでも発表され、大きな反響を集めました。
今読んでも「その通りだな」と思うし、ちゃんと言葉にできてよかったです。「新時代」はエッセイ連載のために書いたわけではなくて、10代の頃から続けている誕生日のステートメントなんです。当時はみんながギスギスしていたし、社会や政治のせいにしている奴らが多かったから、「いやいや、俺らの問題でしょ」と言いたくて。共感してくれたり、「救われた」と感じてくれた人がいっぱいいたし、自分といても「みんなが心のなかで感じていることをキレイに磨いて言語化できた」という感覚があったんですよね。言葉にすることで概念やモノの見方が変わって、新しい世界を作るのもアーティストの仕事だし、自分のなかで一つの成功体験になっています。