
音楽家、小袋成彬。
2018年、シングル「Lonely One(feat. 宇多田ヒカル)」、アルバム『分離派の夏』でメジャーデビュー。2019年にロンドンに移住し、アルバム『Piercing』(2019年)、『Strides』(2021年)、今年2月には最新アルバム『Zatto』を発表し、いずれも高い評価を獲得している。
小袋の初の著書『消息』は、渡英した2019年から2024年までの日々を記録したエッセイ集。コロナ禍によるロックダウン、アルバム制作、22 年のジャパンツアー、NY やヨーロッパ、マラケシュへの旅、日本への帰郷、そして、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻、ガザで起きたジェノサイドへの強い怒り――。大きく揺れ動く世界と対峙しながら、自身の変化と社会との関わり方を記した本作は、同じ時代を生きる我々にとっても多くの気づきを与えてくれるはずだ。著者本人へのロングインタビューを前・後編でお届けする。
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――初の著書『消息』が上梓されました。ロンドンに移住してからの5年間で書かれた全31 話のエッセイを1冊にまとめた本ですが、小袋さんご自身はこの書籍をどう捉えていますか?
一生かけて、何冊も並べられるといいなと思ってます。あと「10代の頃から始めなくてよかったな」と。それはあまりにも恥ずかしいので、28歳くらいで始めてちょうどよかったです(笑)。でも、感覚としては(音楽の)アルバムと一緒ですね。起きた出来事や経験したことをできるだけエゴを出さずに作品にすることをいつも考えているし、アウトプット先が違うだけで、魂は一緒だなという気がしているので。自分の音楽をずっと聴いてくれているリスナーは、(『消息』を読んで)「なるほど、こういうことが言いたかったのか」とわかるんじゃないかな。
――もともと書くことも好きなんですか?
そうですね。19歳くらいからmixiで日記を書いたり、思ったことをメモしていたので。なのでエッセイを書くことになったときも、特に気合いを入れたわけではなく、けっこう肩の力を抜いていたというか。何かを伝えたいというより、毎回スピーチを書いているような感覚でしたね。