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一方、実際の進路選びや受験には様々なハードルがある。個別の状況によってケース・バイ・ケースで一般化しづらいが、渡邊さんが接する生徒の場合、まず学習面のつまずきが大きい。
「勉強がよくできた子でも1年、2年と学習から遠ざかり、簡単な問題も解けなくなっていることが多いです。九九が言えなかったり、50分かけて作文が1文字も書けなかったり。受験できる高校が限られるし、そのギャップにショックを受けて受験自体をイヤがる子もいます」
調査書点(内申点)も不登校の生徒たちの選択肢を狭める要因になる。高校入試では受験当日の点数のほか、中学校の成績などをもとに付けられる調査書が加味されるケースが多い。一般的な全日制の東京都立高校の場合、学力検査7:調査書3の割合で合否が決まる。
学力があっても登校していなければ調査書点は多くの場合悪くなる。加点がない分、難関校などでは勝負できないのだ。
テストを受けない方が
こうした不登校の生徒への「配慮」が全くないわけではない。千葉県教育委員会は25年度以降、中学校が高校に提出する調査書から欠席日数などの項目を削除する。また、東京都では、「出席日数が少ないため、参考にできる資料等を活用しても観点別学習状況の評価を行うことができないと中学校長が判断する場合」は評定を「1」ではなく「/(斜線)」とすることを定めている。東京都教育庁によると、「/」にするかどうかは中学校長の判断で、入試での扱いは「各都立高校で定めている」ものの、「不登校の生徒が不利にならないよう配慮している」としている。ある塾講師によると、「/」の教科は当日の学力検査の点数を調査書点に換算し、事実上学力検査のみで合否を判断する高校が多いという。
ただし、こうした配慮から漏れるケースもある。東京都の女性は来年に控えた娘の高校入試が気がかりだ。現在中学2年生の娘は小学4年生のころから不登校。定期テストだけは別室登校して受験しており、評定には「/」ではなく「1」が並ぶ。
「頑張ってテストを受けているのに1が付くのは本人もショックですし、高校入試を考えるとテストを受けずに『/』にしてもらった方が有利です。でも、『受けない方がいいんだよ』とやる気をそぐことは言えません」