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フジ新人時代は「とにかく会社に来てください」
「スケートをやっていたときは基本的に個人競技なので、『組織で動く』ということにまったく慣れていなくて。当たり前の事ですが、こんなにも『報・連・相』が重要なんだと戸惑いました。1つ何かをしたら必ず報告をしないといけないとか、言葉遣いとかも、一つひとつ注意されながら学んでいきました。人間関係では本当に恵まれました。テレビに出たりしていたから、仲間はずれにされたらどうしよう、みたいなことも考えてたんですが、同期の子たちは『中野友加里だ』ということもわかったうえで同じ友達として接してくれました。人の優しさと人のつながりが大事だというのは、会社に入ってから知りましたね。やっぱりすごく狭い世界で生きてきていたんだな、というのを実感しました」
研修で言われたのは「もし仕事が嫌だなと思っても、とにかくなんでもいいからとりあえず会社に来てください。会社に来ればなにか変わるかもしれませんから」だ。現役時代、けがをしても練習に必ず行っていた中野さんは、会社でもとにかく「行くだけは行く」ことを守った。最初に配属されたのは映画制作部。ベテラン社員にいろいろなことを教えてもらいながら、日々の業務をこなしていった。
「会社に行ったらその時できる仕事を任されて、任せられれば『頼りにされてるんだな』と思ってやっているうちに、2年目ぐらいから自分のプライドも少しずつ低くなってきました。『スケートの中野友加里』ではなく『一般社員の中野友加里』と自分の認識も変わり、仕事もしやすくなり、結果的にいろいろな仕事を任せてもらえるようになりました」
3年目の途中からはスポーツ部に異動。元アスリートとはいえ、フィギュアスケート以外のスポーツのルールはほとんどわからなかったという。そんな時も人の優しさを身にしみて感じた。
「野球だったら、『スコアブックを書くとすぐ覚えられるから』と先輩たちがスコアブックの書き方を教えてくださったり、サッカーやラグビーも現場に行くと他の記者の方が『中野友加里がいる』と物珍しく思って相手にしてくださったり。現場で本当にいろんなことを教わりました。実際にプレーを見ながら教えてもらえるので、すごく吸収も早かったと思います」