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ひと口に不登校といっても状況はさまざまで、不登校児の数だけ苦悩がある。当事者が感じている「壁」とは何か。保護者たちのリアルな声を聞いた。AERA 2025年3月3日号より。
【図を見る】約11人に1人が死にたいと感じている・・・という事実
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当事者間の壁
「この子は一生引きこもりで、親がずっと養わなきゃいけないのか。そう思うと絶望しました」
中学2年の娘が小学4年から不登校の東京都の女性(50)は、不登校が始まった当初、人生が真っ暗になったと感じた。
「まさか当事者になるなんて夢にも思いませんでした。あの頃は産まなきゃよかったとさえ思ってしまった」
当事者の悩みを共有したくて親の会に一度顔を出したが、命に関わるような深刻なケースばかりで場違いだと感じた。以来、親の会には参加していない。
「うちの子は学校へ行けていないだけで親子での会話もありました。そんな状況をあの場で話せば妬まれそうな気がして。当事者間でさえ壁を感じてショックでした」
夫との価値観の壁
夫との価値観の違いに悩む女性も多い。東京都の女性(46)は子どもの選択を受け入れられない夫の説得に腐心した。性別の違和感から中学へ行かない選択をしたわが子。しかし夫は学校へ行かせるのが親の責務とし、「なんで行かないんだ」と叱責。女性は子どものいないところで夫と何度も話し合った。当時のストレスは大きく「血尿が出るほどだった」と振り返る。
両立の壁
オンラインフリースクール「SOZOWスクール小中等部」(東京都品川区)が昨年不登校の子を持つ保護者187人を対象に行った調査では、追い込まれる保護者の姿が浮き彫りになった。半数以上が気分の落ち込みや孤独を感じ、約5人に1人が子どもの不登校を理由に「離職した」と答えた。同スクール広報の廣崎由佳さんは、「不登校の話題となると子どもにフォーカスすることが多くて、保護者に対して社会が目を向けることは少ないです。でも身近に不登校のことを相談できる相手がいなくて悩んでいる人は多い。仕事も大きな問題で、近年は低学年で不登校になるケースも増え、子どもを一人で家に置いておくことはできなくて、どちらかの親が仕事を辞めるケースも珍しいことではありません」と説明する。
「息子を日中1人にできなくて、フルタイムでの仕事の継続が難しくなりました」
と打ち明けるのは東北地方の30代女性だ。中学2年の息子が小学6年の頃に起立性調節障害を発症。次第に食事がとれなくなって死を意識するようになり、留守番はさせられなくなった。転職したばかりだったフルタイム勤務の会社を辞め、中抜けや遅刻早退もしやすい融通の利くパート勤務にした。フルタイムと比べて収入は半減したという。
「すぐ治るだろうと思っていたのでそれまでの我慢と思っていましたが、なかなか戻れずもどかしさはあります」
(ライター・大楽眞衣子)
※AERA 2025年3月3日号より抜粋、加筆
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