
そこで、23年4月からクリニックでは、学校不適応や不登校傾向などで来院する子どものカウンセリングを担当する「医療教育コーディネーター」という仕組みを作り、東京都教育庁の主任指導主事や公立小学校校長などを歴任した松野泰一さんがその職務を担っている。
学校との連携が必要だと医師が判断した場合、医療教育コーディネーターが面談する。学校への働きかけが必要で保護者の同意が得られた場合には、医療教育コーディネーターが学校に連絡を取る。例えば、クールダウンの場として学校の中に落ち着ける場所を用意できないかなどという相談だ。その子の心身の健康を保つために必要と判断されれば、学校に松野さんが相談する。「全ての意向が認められるとは限りませんが、提案し、学校と一緒に考えることができます」(松野さん)
親が学校に直接話すよりも、医療教育コーディネーターが話すことで、親個人の意見ではなく専門家の見立てによるものとして学校側に受け止められやすくなる。また、親が直接学校に相談する場合にも、「学校がどんな支援なら可能そうか、どのタイミングで担任に相談すればよいかなどのアドバイスができます」と松野さん。学校運営についても知見のある医療教育コーディネーターだからこそできる支援だ。相談件数は1年半で延べ約320件。医療と学校双方の橋渡しとしての役割が期待されている。秋山院長はこう話す。
「私たちは不登校の原因を探して解決しようとするだけではなく、この子たちがどうしたら心地よく生活できるかを考えています。本人に学校に行きたいという望みがあれば、どうやってそれを支えていくのか、ここに主眼を置いて支援をしています。そのためには、学校も一緒に考えていただかなくてはならないと思っています」
(フリーランス記者・宮本さおり)
※AERA 2025年3月3日号より抜粋、加筆