なでてく?(写真はイメージ/gettymages)

子猫の凄まじいインパクト

 小林さんととの出合いは、高校生のときだという。

 親戚の家に遊びに行くと、茶白の子猫が室内で歩き回っていた。

 子猫はなぜかポテポテと小林さんの足元に寄ってきた。そして、後ろ脚で立ち、おねだりするように前脚を上下に動かしながら、小林さんを見つめてきた。

 それはすさまじいインパクトだった。

「現代社会とは離れた空間にいるような心持ちがしました。つまり、癒やされたんですね」

どんなときも自我があり、我が道を行く

 だが、甘えた顔を見せてくれたのは一瞬。子猫はあっという間に小林さんの元から離れ、パタパタと違う方向へ走っていった。

 自由に動きまわる猫を見た小林さんは、自分の境遇を振り返って、胸が苦しくなったという。

「当時、根をつめて受験勉強をしていました。切羽詰まって悩んでいる自分がばからしくなって」

 猫を見てほしい。フードをもらうときは真っすぐに甘えてきて、食べ終わったら「そんなことあったっけ?」とばかり、すっとどこかへ行ってしまう。

「猫にはどんなときも自我があり、我が道を行っているように見えます。現代社会で、われわれが失いかけているものを、猫は持っているのではないか。猫の生きざまが、ストレス社会に生きる私たちに必要なのではないかと思います」

こばやし・ひろゆき/1960年生まれ。日本スポーツ協会公認スポーツドクター。著書に『にゃんこと整える。』など多数

猫の写真を10秒見る

 社会にはさまざまな立場や考え方や感じ方の人がいる。自分は自分と頭ではわかってはいるけれど、会社で、家庭で、気づけば周囲の行動や心情に気を配っている。それでもなかなか思うようにはいかない。だから一日の終わりには、つい息苦しさからため息が出るという人もいるのではないか。

「そんな夜は、猫の写真や動画を10秒間見てください。さまざまなしがらみから離れて、本来の自分に戻れるのではないでしょうか」

  2月22日は猫の日。眠る前に10秒の「猫時間」を設けて、自分をいたわってはどうだろうか。

(編集部・井上有紀子)

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