経営する居酒屋「グランマ号」の前に立つ宮本信芳さん
経営する居酒屋「グランマ号」の前に立つ宮本信芳さん

 さらに後ろからやってきた2人の男性に前後を挟まれた。「おたく宮本さんだよね? 警察だ。何しに来たかわかるよね?」。

 警視庁に業務上横領の疑いで逮捕された。「時効の期間を勘違いしていたんです」。

 単純横領罪は5年だが、宮本さんは店長だったため、時効が7年ある業務上横領罪が適用されたのだ。警視庁が逃亡先をつかんだのは、宮本さんが空き巣に保険証を盗まれたことがきっかけだった。期限は切れていたが、いざというときに自分が何者かを証明するため、捨てずに取っておいたものだった。

 保険証の住所は東京都台東区。盗んだ人物が保険証のコピーをつけ、台東区役所に住民票の異動を申し込んだ。「今から思うと、振り込め詐欺や貧困ビジネスの目的で、私になりすまそうと考えたんでしょう」。区役所から警視庁に連絡がいったという。

【後編】<「もう逃げるとこないやろ」 逃亡した西成で逮捕、嘆願署名300人……受け入れてくれた街の仲間の一言>に続く

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