国政選挙も地方選挙も候補者たちが掲げるのは「子育て支援」ばかり。独身である自分が納めた税金が使われていることにモヤモヤする(撮影/写真映像部・馬場岳人)
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 未婚率の増加や核家族化、高齢化などによって、25年後には単独世帯の割合が4割を越えると推計されている。女性は低年金受給になりやすく、老後に不安を抱える人も。AERA 2025年2月17日号より。

【図を見る】2050年には単独世帯数が4割を超える

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 昨年12月に実施したAERAのアンケートでは、独身者の苦境も垣間見える。

「産休育休のフォローなど、しわ寄せは全部独身。現役時代はやむを得ないが、せめて老後は独身のための手厚いサポートがほしい。本当に一人で頼れる人がいないのだから」(滋賀県・公務員・50歳)、「少子化に加担しているのは事実だが、独身もそれなりに将来の不安などがあるということを知ってほしい」(東京都・会社員・48歳)

 こうした声から浮かぶのは「子育て世帯優遇への批判」というよりも、独身こそ老いた時にどう暮らしていくかの悩みがあるのに十分にケアされていない現実への不安や不満だ。実際、1人当たりの老後の生活コストは単独世帯のほうが重く、とりわけ低年金受給者が多い女性の相対的貧困率は男性よりも高い。

 相対的貧困率とは世帯の人数を考慮して出す年間の等価可処分所得(手取り)が、貧困線(2021年は127万円)に満たない人の割合。東京都立大の阿部彩教授が厚生労働省の国民生活基礎調査(21年分)の個票をもとに独自集計した結果によると、65歳以上の一人暮らしの女性の相対的貧困率は44.1%。同じ「高齢」「単身」でも男性の相対的貧困率は30.0%で、女性と14.1ポイントの開きがある。こうした実態も念頭に、シンクタンク「SOMPOインスティチュート・プラス」の大島由佳上級研究員は現役世代が働く上で職場における制度面の改革の重要性を説く。

「女性が特に低年金になりやすい状況に対応する意味でも、多様化する個人の生き方によらずどんな人でも仕事の活躍機会を持てるようにし、男女問わず幅広い人たちに昇進・昇給の機会があることや、賃金格差が生じないことは重要です」

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