SOMPOケアホールディングスは、昨年(2015年)12月1日付けで、大手居酒屋チェーンであるワタミから介護事業の子会社「ワタミの介護」を買収・子会社化して、「SOMPOケアネクスト」に社名変更。旧「ワタミの介護」が運営してきた有料老人ホームなどのブランド名も「レストヴィラ」から「SOMPOケア ラヴィーレ」に変更した。買収から約10ヵ月が経過した現在、経営を引き継いだ有料老人ホームの運営の課題や今後の展開などについて、SOMPOケアネクストの遠藤健社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン編集部 山本猛嗣)
●「人がすべての業界」と痛感 社員教育の充実とICTの導入
――「ワタミの介護」の時代、親会社のワタミが「ブラック企業」として週刊誌などからバッシングされたほか、運営する有料老人ホームでも入居者の入浴中の溺死事故などが起こり、訴訟が発生しました。このため、ブランドは失墜し、経営が悪化していました。経営改善のためにどんなことに着手しているのですか。
私自身、社長就任後、まずは現場を見ようと思い、有料老人ホームやデイサービスなどのすべて施設、約130ヵ所を回り、ホーム長や介護スタッフ、看護師らと面談しました。もちろん、ホームに入居されている利用者の方々にも挨拶し、いろいろとお話を伺いました。
約10ヵ月経過して、介護事業は非常に奥深いと感じました。現在、約7100人の従業員がいますが、従業員は入居者や利用者の方々とは切れることがなく、ほぼ24時間365日、ほとんONとOFFのない世界で働いている。正社員もパート社員も基本的には同じ作業をしています。つくづく重要なのは、人であり、人がすべての業界だと痛感しました。
そこで、まず、取り組むべきと思ったことが、「社員の教育」。次に、「ICT(情報通信技術)の積極的な導入」、そして「地域との交流・連携」の3点です。
実は、各ホームの職員らにヒアリングした際、「もっと体系的で均質な教育をしてほしい」という声が多かった。介護の方法は、各ホームによって異なることが多く、職員独自の「俺流」で行われていることも多い。良い方法があるならば、特定のホームだけでなく、すべてのホームで標準化した方がいいに決まっています。
そこで、今年4月に東京・芝浦に「ネクストステップセンター」という本格的な研修施設をつくりました。約150坪の施設内には、有料老人ホームを再現した居室が3部屋、浴室が3部屋あり、現在、フル稼働で、これまで約5300人が研修を受講しています。4月からは中途採用や新卒の新入社員の教育も行ってきました。年に社員1人当たり平均2回は研修を行う予定です。
――ICTとは、居室や浴室などで事故を防ぐための「見守りシステム」などを設置するということでしょうか。
「ICTの導入」については、我々は安全性だけでなく、生産性と効率性を高めるためにも導入したいと考えています。
その代表的なものが排泄ケアへの応用です。超音波センサーで膀胱内の尿量の変化を検知することにより、排尿パターンを把握できます。そうすれば、夜間の排泄ケアの効率化のみならず、「介護の質」の向上にも役立ちます。
排泄ケアのセンサーについては、上半期は実験的に行って来ました。今後、本格的に展開し、今年度中にはすべてのホームに導入する予定です。この分野は日進月歩です。いち早く導入して、経験を積んでいきたいと思います。
またワタミ時代は、地域とのつながりもあまり強くなかった。地域の病院や自治体との連携を高め、地元の人たちが出入りするようなホームを目指し、透明性も高めていきたい。