JR国立駅から並木が美しい「大学通り」を徒歩で約15分、静かな住宅街に桐朋はある

ヨガでけがをしなくなった

 チームでの練習に加え、「ベースとなるところは全部自分で考えてやっていた」と森井は言う。何をやっていたのか。

「大きい部分はヨガですね。野球は自分の体でやるので、技術の前に体の強さや柔らかさがなければいけない。いいスイングをしてもパワーがないと勝てなかったり、ピッチングだったら柔軟性がないと勝てなかったりする。ヨガで自分の体と向き合えてこられたことが大きいかなと思っています。母がヨガの先生なんで」

 純子さんはもともとヨガをやっていたが、「翔太郎の体を見て、やったらいいんじゃないか」と考え、勉強してインストラクターの資格を取ったという。純子さんが振り返る。

「翔太郎も最初はヨガを嫌がりました。でも、中3の冬ぐらいから、野球でプロになりたいという思いが強くなってくるにつれ、教えてほしいというようになりました。実際、やってみたら動きがよくなったこともあって、続けることができたと思います。ヨガをやる前は柔軟性がなかったこともありますし、姿勢が良くなかった。ケガも毎年してました。野球は、ありえない態勢で瞬間的にすごい力をかけるスポーツだと思うので、それに耐える土台を作っておかなければいけない。やってみたら、ケガを本当にしなくなりました。姿勢も改善されたと思います」

あえて「ウエイト」はしなかった

 ヨガとともに、森井がポリシーにしていたのが、ウエイトトレーニングをしないことだったという。

「インナーの筋肉をつけてからアウターの筋肉を付けないとおかしくなる。母からインナーの筋肉の大切さを教わって、高校時代はウエイトをやらないで160㌔を投げることを目指してやってたんですが、できなかった(笑)。これからはウエイトをやって、どんどん球速を上げていきたいと思っています」

 田中監督は、森井についてこんな話をする。

「練習前のアップでも、指先からつま先まで意識がいきわたって、途切れない。遠くから見ても、森井だ、と本当にわかるんです。体が大きいとかじゃなくて、しなやかでなめらかな動きというか……。感覚が研ぎ澄まされていて、練習中にもここを休めておいたほうがいいなと思うと、『今日はこれくらいにしておきます』と自分で切り上げることもあります。それは手を抜くとかじゃなくて、自分の体と対話しているんですね」

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母子のコミュニケーションのために始めたこと