1979年に起きた米スリーマイル島(TMI)原発事故の実績を踏まえ、1日の取り出し量を20キロまたは50キロと仮定すると、それぞれ170年、68年が必要となりました。ただ、昨年の試験的取り出しを考えると「170年でも楽観的な数字」というのが、今の私の率直な考えです。
今の体制のままでは、廃炉全体の進行にとっても、現場で危険な作業をする作業員の方々にとっても、福島に住む方々にとっても、日本の社会にとっても良くありません。
事故炉の廃炉は、原発を推進する産官学の「原子力ムラ」の限られた知識の中で解決できる問題ではありません。社会のサポートがなければできません。国や東電は、社会に向き合い人々の意見を聞き、双方向の対話をすることが必要です。
社会の中から廃炉を見た時、初めて廃炉の本質的課題が見え、社会と技術の両面からイノベーションが起き、廃炉は安全かつ効果的に進展します。今すぐにしっかり見直すべきです。
(編集部・野村昌二)
※AERA 2025年2月3日号