支えてくれたのは、友人や家族だけではない。この世を去った翔太さんもまた、佳織さんに寄り添い続けているという。
「夫の遺体を見たとき、直感的に『翔ちゃんはこの中にいない』と思いました。肌のぬくもりを求めると、一人ぼっちの寂しさに引きずりこまれる。でも翔ちゃんの魂とつながっていると信じられると、心があたたかくなります。翔ちゃんは今ごろ、好き勝手にいろんなところに行って、会いたい人に会っている。そう考えるほうが、幸せなんです」
天国からのラブレターに書いてあったのは…
翔太さんの“魂”をひしと感じた出来事がある。
震災から間もない4月、突然天国から「ラブレター」が送られてきたのだ。届けてくれたのは、熊本在住のシンガーソングライター・ふたばたけしさん。翔太さんと佳織さんの共通の友人だ。
佳織さん夫妻は23年夏、「私たちがほれこんだ自然豊かな地で是非歌ってほしい」と、ふたばさんを輪島に招き、ライブを企画した。ライブ後、翔太さんは「能登に来て感じたことを歌にして」と“むちゃぶり”し、ふたばさんは熊本に戻ってからすぐに曲を作った。だが、完成した曲を聴くことなく、翔太さんは旅立ってしまった。
震災後、ふたばさんは佳織さんに聴かせてよいものか、ひどく悩んでいたという。
理由はその歌詞にある。
<幽霊とかお化けとかそんなの全然信じられないから 僕が死んで骨になったら君が海に流してほしい 僕は海になって雲になって雨になって山に降って川になって 君の元へ君の元へ帰ってくるよ>
<死んだらずっと墓の中なんて耐えられない そもそも出不精な僕のこと引っ張り回したのは君じゃないか おかげでこんな世界のことすっかり好きになっちゃったよ>