こども家庭庁が2023年に初めて公表した「不適切な保育」の実態調査によれば、2022年4~12月に全国の認可保育所で914件の不適切な保育が確認された。一体、何が起きているのか。長男が不適切保育にあったという男性が、本誌の取材に応じた。AERA 2025年2月3日号より。
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神奈川県川崎市に住む男性(43)は、同市の認可保育園に通う当時5歳の長男の右腕に、あざがあるのを見つけた。
このあざはなんなのか、大きすぎる──。
2019年10月のことだった。あざは、普通に遊んでいる時にできたようなものではない。どこかにぶつけたのだとしたら、相当な状況のはず。しかし、お迎え時の申し送りでそのようなことは一切言ってこなかった。故意にか……。男性が長男に、
「これ(あざ)どうしたの?」
と聞くと、長男は、
「○○先生にギュッとやられた」
驚いた男性は翌朝、園に聞くと「そんなことはなかった」とだけ言ってきた。やがて長男は、周りの大人を警戒しはじめ、ちょっと叱られただけでも怒鳴って暴れるようになった。明らかに様子がおかしくなったので、児童精神科で診てもらうと「情緒障害」と診断された。のちに、長男は園内の個室に閉じ込められていたこともわかった。
男性は園に、「しっかりした対応をしてほしい」と伝えると、長男が園で暴れるなど安全上の理由で、その年の12月に強制的に退園させられた。長男は別の園に移ると、次第に落ち着きを取り戻していったという。
男性は21年10月、当時の園長と加害した保育士に対し、真摯な謝罪を求め民事調停を申し立てたが、相手方が一度も出頭せず調停は不成立に終わった。翌22年10月、先の2人に加え、保育園の運営会社を相手に10万円の損害賠償を求め横浜地裁川崎支部に提訴。しかし、24年8月、「(長男が)けがをさせられた証拠はない」などとして請求は退けられた。男性は控訴し、係争中だ。