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 1月8日付の日本経済新聞朝刊にこんな見出しの記事が掲載された。

【写真】トヨタが開発したヒューマノイドはこちら

 「エヌビディア、ロボ覇権狙う CESで表明 AI技術を無償提供 人の自然な動き『生成』」

 記事の内容はややわかりにくいのだが、この記事は重大なことを伝えている。

 それは、世界の最先端半導体の9割近いシェアを誇る米エヌビディア社が、最先端半導体の需要先として、自動運転車の次にヒューマノイド(人型ロボット)に狙いを定めたということだ。

 少しだけ記事の具体的な内容を紹介すると、1月6日に米エヌビディア社のジェンスン・ファンCEOがラスベガスで開催されたテクノロジー見本市「CES」の基調講演で発表した「NVIDIA Cosmos」を利用すると、例えば、倉庫内の棚から箱が落下する様子をリアルに再現した映像を自ら生成できる。これを使えば、実際に工場などで事故を起こすことなく、いくつでも異なる事故映像が作れるわけで、それを工場で使われるロボットに学習させて、事故を認識する能力を身につけることが可能になるという。

 エヌビディアは、同社の既存のロボットシミュレーションプラットフォーム「Isaac」の新機能も同時に発表した。これを使うと、例えば、特定の物体を掴むという目的の作業について少数の事例から大量の学習用データを生成することができる。

 この二つの新たなプラットフォームをスタートアップや研究者が広く使えるようにすることにより、エヌビディアは、特にヒューマノイドの開発・活用を目指す企業のニーズに応えることを期待するとしている。

 そして、冒頭に述べたとおり、この構想がうまくいけば、エヌビディアは、ヒューマノイドの開発・利用の分野でのAI用半導体及びこれを使ったプラットフォーム、そして、パーソナルAIコンピューターなどの市場を独占することができるということになる。

 ヒューマノイドの開発競争は、既に各社が生成AIを活用する段階に入っている。それにより、ロボットの能力の進化がこれまでとは何桁も違うスピードに進化し始めた。

 ロボットと言えば、日本の産業用ロボットを思い浮かべるかもしれない。今でも工場を中心に大活躍していて、中国勢の追い上げは激しいものの、まだ日本が全体としては優勢を保っていると言っても良いだろう。しかし、産業用ロボットは、用途が限定され、使える場所もそのロボットの形状などの制約により限定される。

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