AERA 2025年2月3日号より

独身で地元に戻れない

「いまだに地方はこうなんだって驚きました。それが当たり前の環境にいたら仕方ないかもしれないけど、地域格差を目の当たりにした感じ。地方が嫌というより、旧態依然とした考えが固定化している職場が嫌です。この環境で働くのは、正直しんどいと思いました」

 多くの人が集い、価値観の多様化が進む大都市に比べ、地方では往々にして、古い価値観が残りがちとされるのは、よく語られる話ではある。独身に対するレッテルやイメージも然り。未婚率の上昇とともに単身世帯が増加する現在ではあるが、特に地方では「なぜ結婚しないのか」という目を不躾に向けられる瞬間があると、女性たちは証言する。

「30歳を超えて独身でいることの肩身の狭さを、地元に帰ると強く感じます。独身のままでは、地元に戻りづらい」

 こう吐露するのは、九州地方出身で、現在東京で働く会社員の女性(34)。仕事中心の多忙な日々を送る中、「いつかは地元に戻って、もう少しゆとりある生活を送りたい」との気持ちもある。交際している相手はおらず、結婚の予定もないが、独身で地元に戻るのは、「精神的なハードルがあまりに高い」とこぼす。

“早く子どもを”の圧

「この正月もそうでしたが、地元に帰るたびに“結婚はまだか、早く子どもを”と祖母や母親から急かされて、うんざりしてます。地元にいる友達はみんな20代で結婚して子どもがいるし、今の自分とは環境が違いすぎて、話が合う人がいない。独身のままUターンでもしたら、“行き遅れた子が、行き場がなくて戻ってきた”とか言われそうだし、そんな価値観が根付いた土地で、この年で誰かと出会うのも難しそうだなって……」

(フリーランス記者・松岡かすみ)

AERA 2025年2月3日号より抜粋

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