フジテレビの港浩一社長の記者会見から1週間足らずで、100社を超える企業がフジテレビのCMスポンサーを降りたとみられる。ビジネスと人権問題に詳しい弁護士は、「CM出稿停止自体は企業判断としてあり得るが、社会に対する説明や情報発信が不足している」と指摘する。
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2年前と状況変わらず
企業の危機対応力が問われている。故ジャニー喜多川氏による性加害問題で被害者に対応してきた蔵元左近弁護士は、開口一番、こう言った。
「2年前と状況があまり変わってないことが残念です」
2023年3月、英BBCは同氏がジャニーズ事務所(当時)に所属する少年たちへ性的虐待を行っていたと報道。当初、取引先企業の反応は鈍かった。だが、同9月、事務所が性加害問題を認める記者会見を開くと、所属タレントを起用した広告の見直しの発表が相次いだ。
蔵元さんには、2年前の状況と、今回のフジテレビの会見後に起こった「CM撤退ラッシュ」が重なって見えるという。
CMを停止は「すばらしい決断」?
フジテレビでのCM放送を見合わせた企業は、1月23日までに100社を超えるとみられ、多くはその理由を「一連の報道を総合的に判断して」としている。だが、蔵元弁護士はこう指摘する。
「CMスポンサーを降りた企業はフジテレビに対して、『会見での説明が不十分』だと批判していますが、その企業自身もCMを停止した経緯や理由を十分には説明していません」
それは、「スポンサー企業にとって、不十分な行動」と、蔵元弁護士は言う。
一般消費者からすると、企業が主体的に考えてCMスポンサーを降りたのか、「なんとなく危なそうだから」と世間に忖度し、右へ倣えでCMを取りやめたのか、区別がつかない。
「なぜ、そのタイミングだったのか。なぜ、スポンサーを降りるのか。しっかりした説明がなければ、主体的な判断を行った企業とは見られない。フジテレビと同様に、世間から批判の声が高まらなければ動かないと認識される可能性があります」(蔵元弁護士、以下同)
事実が明らかになっていない段階であっても、企業としての懸念と判断を説明することはできたはずと、蔵元弁護士はいう。