たとえば先日(ほんとに1週間前のこと)、知人女性(40代)が、大手企業の社長接待(されるほう)に出たときのこと。相手企業が当然のように「それでは……」と社長(60代男性)にカタログのようなものを差し出してきたという。そこには女性モデルやタレントたちの写真と価格が記されていたという。

 昭和の話ではなく、令和の今に起きている現実だ。そう、これはフジテレビの問題だけじゃない。もちろんフジテレビの問題を薄めようとしたいのではなく、これまで問題にもならずに当たり前のように行われてきただろうことが、ようやく「それは問題なのだよ」というところまで報道されている。

 振り返れば、ジャニーズの児童性虐待問題が開けたブラックボックスは、予想もつかない深さと闇を抱えていたのだということなのだろう。男の子たちが被害にあった事件だけれど、報道当時から多くの人が「スターを目指す女の子の被害も相当にあるのではないか?」と指摘してきた。そしてそれは想像に難くない、というより、「実際によく見聞きする」人が多かったからだろう。私の身近にも芸能界での被害を昔話として語る女性は1人や2人じゃない。

 ある番組のオーディションにナレーターとして合格したところ、沖縄のホテルで水着になって撮影すると言われた。「それは話と違う」と言うと連絡が来なくなった。うるさいことを言ったからかな……と落ち込んだが、実際に水着姿でホテルで撮影した知人女性はディレクターにレイプされたという。さらにそのオーディション自体が嘘だったことが後でわかる。でも、その女性は訴えなかった。「信じた自分が悪い」と思ったこと、裁判などをすることで悪い評判が立ち仕事に影響があるのではないかと恐れたからだ。

 別の知人は、まだ中学生だった時にSMの格好をした撮影を強いられた。SMという言葉も知らず、何が行われているかもよくわからず、大人たちに「仕事だから」と言われ、ノーという術も知らず、そのまま撮影が行われたが、直後から精神的に不安定になり芸能活動を継続することはできなかった。

次のページ
「私の身体」をめぐる事件が多すぎる