「わずか5年間で需要規模を1.6倍に増やして新しい事業を開始すると、供給不足が起きインフレ要因になります。さらに、43兆円のうち武器購入に充てられる中には、米国製の調達品もあります。供給不足と相まって、輸入増加を通じて円安圧力になり、これもインフレ要因になります」
あえて、その逆の作用があるとすれば、防衛技術の研究が民間のイノベーションを誘発することだ。中長期でも、日本経済の生産能力の向上に役立つ。しかし、イノベーションの効果は先見的にはわからない。
熊野さんは「日本はこれ以上の防衛費の拡充を安易に進めるべきではない」と語る。
「日本は自らの基軸をしっかり定め、ある程度は自主外交を進める選択しかありません。歳出の中身を精査し、不要な補正予算を抑制したりすることでやりくりするのが健全です」
(編集部・野村昌二)
※AERA 2025年1月27日号より抜粋