トランプ氏の米大統領就任によって、日本への防衛費拡充の要求が高まる公算が大きい。石破政権はさらなる負担増に前向きに応える可能性があるという。AERA 2025年1月27日号より。
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「防衛増税が再燃する可能性がある」
と話すのは、第一生命経済研究所・首席エコノミストの熊野英生さん。トランプ氏の返り咲きは、防衛費のさらなる拡充圧力をもたらすという。
「トランプ氏は常々、同盟国に防衛費の負担増を求めることを表明してきました。一対一のディール(取引)を好むトランプ氏は、日本に対し、防衛費のGDP(国内総生産)比2%超を求めるでしょう」
2022年末、岸田文雄前首相はロシアのウクライナ侵攻を受け、23~27年度の5年間の防衛費の総額をそれまでの1.6倍もの43兆円に増やすと決め、新たに必要となる財源のうち1兆円強を増税でまかなうことを決定した。これにより、27年度にGDP比2%まで増やす計画を定めた。これを、トランプ氏は2%超へと増やすことを促すだろうという。
昨年12月にトランプ氏は、国防次官(政策担当)にエルブリッジ・コルビー氏を起用すると発表した。日本に対して「防衛費をGDP比で3%に増額すべきだ」と主張してきた人物だ。日本に対する要求が強まる可能性がある。「そうなると、1兆円の防衛増税以外に新たな増税の必要性が生じます。さらなる防衛費の積み増しは、新たな増税につながりやすい」(熊野さん)
石破首相は防衛が持論
在日米軍の駐留経費(思いやり予算)の負担増も、トランプ氏は求めてくる公算が大きいと見られている。そうなった時、石破氏はどう出るか。熊野さんは、「石破政権は安全保障に熱心で、石破首相は『防衛』が持論」だとして、こう述べる。
「トランプ氏が要求してくる防衛費や、在日米軍の駐留経費のさらなる負担増に前向きに応える可能性があります」
身の丈を超える過大な要求に応える余裕は日本にはない。さらなる増税となれば、企業収益の悪化や個人消費の減少も避けられない。熊野さんによれば、経済学の発想では、防衛費の拡大は需要を増やすが、生産能力はそう簡単に増やせないという。