このコラムが配信される日本時間1月21日午前6時は、米国東部時間20日午後4時。トランプ氏は、正式に大統領に就任しているはずだ。日本時間21日以降はトランプ氏によるメディアジャック状態が続くだろう。
「タリフマン(関税男)」を自任するトランプ氏は、大統領選挙中に中国への60%関税、全ての輸入品への10~20%の一律関税などをぶち上げ、選挙後にはメキシコとカナダに25%関税、中国には10%の追加関税を課すと表明した。
さらに、グリーンランドの領有を目指すとか、カナダを米合衆国51番目の州にするとか、パナマ運河を取り戻すというような常軌を逸した発言を続けている。
トランプ氏の言動はヤクザの組長を想起させる。
街中で出くわしたヤクザには、とにかく目を合わせず、相手の関心を惹かないことが大事だ。弱い者の唯一の防御方法である。
第1次トランプ政権の時には、安倍晋三元首相は、こうした手法ではなく、相手の懐に飛び込んでひたすら媚を売り、さらには、集団的自衛権、米製武器大量購入などの貢物を次々と繰り出して、あわよくば一の子分に取り立てられようとした。日本の平和主義を投げ捨て、国民の税金を無駄な武器購入に浪費することで自己承認欲求を満たそうとしたのだ。
今、日本を率いる石破茂首相は、安倍氏とは全く正反対で、誠実、不器用で、媚びない、ぶれない性格だ。トランプ氏ともまた好対照である。
石破首相は、表向きトランプ氏との早期面会を望む姿勢を見せた。しかし、側近の話を聞くと、決して、慌てふためいて訪米するつもりはないようだ。角を立てないように、とりあえず「早く会いたい」と言っているのだろう。賢明な対応だ。
一方、先週の本コラムでも書いたとおり、日中関係は、驚くほどのスピードで改善している。先週の日中与党交流協議会では、森山裕自民党幹事長率いる日本側代表団と中国の李強首相の会談が実現した。破格のもてなしである。
また、同コラムで予言した日本産水産物の輸入再開についても、王毅外相は、海水サンプルの検査の結果が「安全であれば輸入を再開する」意向を示したと報じられたが、これも驚くほどのスピードだ。
中国軍で東シナ海などを管轄する東部戦区の代表団も13日から17日まで、6年ぶりの訪日を果たしている。
日中関係改善が急ピッチで進んでいるのは、中国の苦しい立場を示すものだという解説ばかりが流れているが、それだけでは物事の本質を見失う。その背景にあるのは、先週のコラムでも触れた、石破首相の人間力である。