チケット売買仲介サイトでの高額出品者に対し、情報開示請求が行われ、話題を呼んでいる。「みんなやっているから」と軽い気持ちで転売に手を染める危険性について弁護士に聞いた。 AERA2025年1月20日号より。
【写真】栃木県在住の13歳。大ハマりしているアイドルグループがこちら
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「ドームツアー昨年に引き続き全滅」
「ファンクラブ歴3年半、まだ一度も生で会えず」
「どうやったら会えるんですか?(涙)」
人気アーティストの興行チケット“当落日”、SNSにはそんな嘆きの声があふれる。一方で同じ日、仲介サイトには何百枚というチケットが売りに出される。なかには、もともと1万円前後の公演が「120万円/枚」「80万円/枚」など、想像を絶する高額で並ぶこともある。
こうした事態を受け、人気アイドルグループを多数擁するSTARTO ENTERTAINMENTが昨秋、仲介サイト「チケット流通センター」の運営会社に対して「コンサートや舞台などのチケットを高額転売目的で出品する人物らについての発信者情報開示請求を」したと発表。さらに12月、「東京地方裁判所に発信者情報開示命令を求める申立を行っ」た結果、同社から「出品者の情報が開示された」こと、また任意の開示を拒否した仲介サイト「チケットジャム」の運営会社に対しては「現在、裁判手続に向けて準備を進めている」ことを報告し、ファンから「転売ヤー逮捕されて!」「徹底的に高額転売排除してほしい」と喝采の声が上がった。
不正転売禁止法の施行
そもそもチケットの高額転売は、2019年に施行された「チケット不正転売禁止法」で禁じられている。
この問題に知見が深く、弁護経験もあるヴィクトワール法律事務所の徳永祐一弁護士は、同法について「一部の団体や個人が買い占めて高値で売る行為は、市場を歪ませる行為です。会場近くでチケットを高値で売るダフ屋行為を規制する法令は昔からありましたが、公共の場所以外、つまりネットなどでの転売行為が既存の法令では取り締まれなかったため、一般消費者や興行主の利益保護のために、新たにできた法律です」と説明する。
「興行主の事前の同意を得ない有償譲渡で、かつ興行主の販売価格を超えているものを不正転売と定義しています。対象となるのは『特定興行入場券』のみですが、現在日本で販売されているコンサートや演劇などのチケットは基本的にこの法律に準拠していますので、ほぼ当てはまると言っていいでしょう」