求められる転売対策
同法では興行主に対しても、不正転売を防止する措置を講じることが求められている。いまだ公式リセールがないケースもあり、求める声が上がるのは必然と言えよう。だが、急病や急用で行けなくなったチケットを欲しい人に譲れるという点においては有用であっても、「いい席で見る」ことを目的に複数のチケットを入手しようとするファンが重複分をリセールに出す可能性は限りなく低く、それだけでは根本的な解決にはつながりそうもない。併せて入場時の本人確認も必要になるだろう。例えば、長年人気を博し続けているサザンオールスターズやB’zは、申込者本人のみならず同行者も、顔写真付きの身分証明書による本人確認を徹底しているし、最近で言えば、人気グループWEST.の舞台やNumber_iのライブで本人確認が実施された。公演によっては、事前に顔写真の登録を求めるケースも出てきている。
だが、リセールシステム採用にしても、本人確認実施にしても、転売対策のコストはチケット代金、つまりルールを厳守しているファンにも跳ね返ることになるから、興行主にとっても容易な決断ではないだろう。一人ひとりが不正転売に加担しないという意思を持つことが何より重要だ。
抽選に外れてもどうしても会いたい気持ちも、いい席を求める気持ちも、わかる。だが、そのために二度と推せなくなるリスクを冒すのか。それ以上に、ルールを破って参加した公演で、推しに正々堂々と顔向けできるのか。いま一度、各々の胸に問う必要がある。
(ライター・伊藤英里)
※AERA 2025年1月20日号