たとえ罰金刑のみで済んだとしても、前科犯となる。ましてや逮捕や裁判となれば氏名や居住地も公開されるため、軽い気持ちで行った転売が、一生ついてまわることになりかねない。

 また、「仮に刑事で不正転売の罪に問われなかったとしても、営業権侵害として、民事で損害賠償請求を受けるリスクはある」と徳永弁護士は指摘する。今回も、開示請求によって転売者の身元が明らかになれば、「申し立てや裁判にかかった費用なども賠償対象となりうるかと思います」。

購入者にもリスクがある

 ちなみに、違法出品のチケットと知りながら売買を仲介する業者には、非はないのだろうか?

「仲介サイトの建前上は、あくまでもチケットを販売する場を提供しているだけ、ということになる。かなりグレーではありますが、違法行為を禁じる告知は行っているので、いきなり罪に問われる可能性は低い」と徳永弁護士。「とはいえ、興行主から訴訟を受けることはあるでしょうね」

 17年には最大手だった「チケットキャンプ」が突然終了を決定している。近年はSNSでの高額転売も横行しており、仲介サイトだけがその温床というわけではないものの、今回の開示請求にまつわる裁判が、新たな風穴となるかもしれない。

 では、買う側は罪に問われることはないのだろうか?

「購入者は、不正転売を目的として買わない限りは法には触れない。単に行きたいから、という理由で購入しただけであれば、処罰されることはありません」(徳永弁護士)

「ただ、法律を犯していないことと、規約違反とは別の問題です。仲介サイトで買う行為も、定価で販売する行為も、興行主の定める禁止事項に抵触することが多い。その場合、二度と当該興行主からチケットを購入できなくなったり、ファンクラブから除名されたりするリスクはある。大ファンなのに、その先一生推せなくなるわけですから、注意が必要です。正規のリセール以外では、そもそも売るべきでも買うべきでもありません」

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求められる転売対策