NHK公式サイトから
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 テレビから性的なことが流れてくるのは、50年以上生きていても、やっぱり慣れない。特に、そばに誰かが一緒にいるときなど、それが両親であったりするならばなおのこと、友だちであってもそれなりに、とても気まずく、落ち着かず、とたんに時の歩みは遅くなり、どういうわけか耳が熱くなる。

 NHKである。大河ドラマである。これからの大河ドラマは、各自、個室で一人でスマホで観てくださいね、ええ、日曜日の夜にお茶の間で家族全員で観るドラマじゃなくていいんですよ、一人一台の時代ですからね! とNHKから一方的に突きつけられたような思いだ。さようなら、私の大河ドラマ。日曜の夜、それぞれ新しい週の準備をしながら大河ドラマをかけっぱなしにするような時間はもうなくなっちゃった。

 そう、今期の大河ドラマ「べらぼう」は江戸時代の吉原が舞台である。NHKによれば「吉原というのは男が女と遊ぶ町」(ドラマの中でそう紹介されていた)とのことで、主人公は「日本のメディア産業、ポップカルチャーの礎を築き、時にお上に目を付けられても面白さを追求し続けた人物”蔦重”こと蔦屋重三郎」(NHKホームページ)である。

 ご存じのように蔦屋重三郎とは、「吉原細見」という、今風に言えば、「風俗店紹介誌」をつくった人だ。吉原のマップをつくり、お店を紹介し、女性を格付けしたりなどして、寂れつつあった吉原を盛り上げた男である。

 当然、ドラマの中では、吉原吉原吉原吉原吉原吉原吉原吉原吉原吉原吉原……と「吉原」という単語が何十回も音声として流れてくる。セックスシーンはないが、女性の裸の遺体が「悲惨」の表現として出てくる。さらに昼間に再放送もされた番宣番組では、ドラマ出演している俳優のかたせ梨乃さんが現代の吉原を探訪したりして、2025年に入ってまだ2週間も経っていないのに、ものすごい量で「吉原」という単語が繰り返し公共の電波に流れ、ものすごい勢いで「吉原」がエンタメ化されているのを実感している。Xで秀逸なことを言っている人がいた。「(吉原は)男が女と遊ぶ場所ではなく、男が女で遊ぶ場所だ」と。

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攻めてますね、NHK…