夫 根岸大夢[35]根岸火工 花火師
ねぎし・ひろむ◆1989年、埼玉県皆野町生まれ。自動車整備士、貨物会社での入換機関車の運転士を経て、結婚を機に2019年から根岸火工有限会社に入社し、煙火の販売、製造を行う花火師となる
彼女と出会ったときは一人暮らしを始めたばかりで近所の飲み屋の常連でした。僕のボトルで勝手にハイボールを作りだすので最初はびっくりしましたが(笑)、いまも彼女の明るさに助けられています。花火屋の娘だと聞いても、そんなに驚かなかったですね。
僕には12歳上の姉と10歳上の兄がいて、兄が結婚して実家を継いでいたので、根岸の家に入ることは問題ありませんでした。名字が変わるくらい別になんてことないですし。
花火作りは義父に一から教わりました。花火は夏がメインですが秩父には12月に「秩父夜祭」があり、打ち上げがあるので一年中忙しい。冬場は静電気の摩擦で火薬に火がつくこともあり細心の注意を払って作業します。でも危険だと感じたことはないです。
花火はどんなに完璧にできたと思っても、いざ揚げてみると完璧ではないんです。でもそこも楽しい。それに花火が上がると人は絶対に足を止めて見上げてくれる。そう思うと「自分すごい仕事をしてるんだな」と頑張れるんです。
(構成・中村千晶)
※AERA 2025年1月20日号