エレベーターで高層階に向かい、案内された部屋に入る。しかし、目に飛び込んできたのは冒頭の和室だった。
「タワマンのパーティールームというくらいだから、てっきりゴージャスな空間だと思ったんです。『大人数が集まるなら仕方がないか』と自分に言い聞かせつつ、部屋の中央に置かれたちゃぶ台の近くに座りました。でも、周囲を見渡すと、どう考えても男性が多い。20人くらいいた参加者のうち、女性はたったの3人でした」
合コンとしては完全に破綻している。
単純計算で“競争率”5~6倍という状況に出遅れたAさんは、悔しまぎれに飲み食いして参加費分を取り戻そうとしたものの、ちゃぶ台の上に熟成肉などなく、手作りの焼きそばとプライベートブランドの缶チューハイが置かれていただけだった。
「ひとりでフニャフニャの焼きそばを食べながら、『一体、自分は今何をしているんだろう……』と惨めな気持ちになってしまいました」
「港区女子」はいない
現在、タワマンはどこの街でも見かけるようになったが、かつてのタワマンパーティーといえば、港区でハイスペックな美男美女がシャンパングラス片手に優雅な話題に花を咲かせる……といった、まるで都市伝説のような存在だった。それが近年はAさんが参加したような、「普通のタワマン」で営利目的に開かれるケースが増えているのだという。
恋愛コンサルティングのアモーレ石上さんは、次のように解説する。
「純粋な楽しみを目的とした個人的なパーティーと、営利目的で開催されるパーティーの二極化が進んでいるように思います。例えば、富裕層が住むタワマンで、主催者がすべて負担するイベントや、気軽な参加費だけで楽しめる個人的なパーティーには、ハイスペックな男性がいるため女性たちが集まりやすいです」
一方、「イベンター」と呼ばれる存在が営利目的で開くパーティーは、男女比を気にせずにLINEでとにかく人をかき集めるため、海の物とも山の物ともつかぬ素性のよくわからない者たちが集まる。言葉を選ばずに言えば「非モテでも参加できる」ということだ。そこに港区女子はいない。